先日、療育事業所様向けコンサルティングを担当させていただいている事業所オーナー様から、「集客につながるSNSはどれがいいですか?」というご質問をいただきました。
ご回答を行う中で、「これは多くの療育事業所オーナー様の共通したお悩み・疑問ではないか」と感じたので、こちらでもシェアしたいと思います。
事業運営の観点から考れば、自社の事業所の利用者確保(利用推進)は、療育事業所オーナーや管理者にとって、もっとも重要な仕事の一つだと思います。
これまで弊社の療育事業所運営では、様々なSNS活用を行い集客を図ってきました。
その中で、「療育事業所の集客」という視点で考えた、各SNSのうち最も効果的であるものを考察したいと思います。
Instagram、Twitter、Facebookページ、YouTubeです。
実は、私が最も療育事業所の集客として運用が難しいと感じているSNSです。
苦手である理由は以下の通りです。
- タグ文化である
- (療育事業所として)写真の素材選びが難しい
- 記事内にリンクを設置できない
①タグ文化
Instagramの特徴は、タグによる検索ヒットです。
ブログで言うところの「カテゴリー」のようなものですが、タグは一つの記事にいくつでも設定することができます。
Instagramで何か投稿を検索したい場合は、タグを検索する→ヒットした一覧から自分が気になる投稿(画像)をタップ→投稿詳細画面に行く
という流れになります。
例えば、「#放課後等デイサービス」というタグを記事内に設置しておけば、「放課後等デイサービス」というタグ検索をした方の結果一覧に、自社投稿も表示されます。
一見たくさんタグを設置しておくことで、閲覧数upにつながるのでは?と感じるかも知れませんが、なかなかそううまく行かないのがInstagramの難しさです。
その理由は、タグが安易に付けられるため、例えば「放課後等デイサービス」でタグ検索しても、とてつもなく沢山の投稿が表示されるため、自社事業所を見つけてもらいにくいですし、事業所名(放課後等デイサービス○○)だと、その言葉で検索する人は少ない、などです。
②写真の素材選びの難しさ
療育事業所などの投稿写真で多いのが、日々のお子さんの様子や教材などです。
「今日は、○○で遊びましたー!」や「△△な教材を使って、○○なことをしています!」などです。
こういった写真は、事業所のイメージにはなりますが、見学申し込みへの導線としてはさほど効果はないと言えます。
なぜなら、療育先を探している保護者の方からすれば、色々な情報がほしいので、どうしても文字による解説(事業所案内)が必要になります。
Instagramは、むしろ「すでに利用してくださっている方との情報共有」として使う(より自社のファンになってもらう)という視点で使うと効果的だと思われます。
例えば、預かり型の事業所さんだと「お子さんが今日どんなことをしたのかが分かる」ことにつながります。
弊所では、保護者の方がInstagramの写真を見せて、「今日はここ(発達支援ゆず)に行くよ」と声をかけ、子どもに今日の予定を伝えるという「視覚支援として」使っていたりします。
③記事内にリンク設置ができない
私がInstagramを集客ツールに使えないと考えている最大の理由がこれです。
Instagramでは、記事文章内にリンク(URL)を記載しても、自動的にリンクが生成されません(URLの文字列が記載されるだけです)。
つまり、写真や記事内容が気になったとしても、そこからすぐに自社サイトへ誘導することができません。
その場合は、一旦アカウントのプロフィールページに行き、そこに設置されている事業所URLをタップし、事業所サイトからさらに目的の記事(例えばブログ記事)に来ていただく必要があります。
これは明らかに工数が多いため、見込み利用者の中では、よほどのことがないとそこまでしてくれる人はいないでしょう。
こういった視点から見ると、InstagramはInstagram内で完結する「クローズドなSNS」であえると言えます。
あくまでも、既存の利用者に向けての発信ツールとして使うのがお勧めです。
ちなみに弊社では、スタッフが持ち回りで、各スタッフの感じたことを投稿しており、ひとつの「スタッフの個性を発信する場」としています。
Twitterの最もTwitterである所以は、「拡散性」です。
これは自分のツイートを、フォロワー(またはフォロワー以外の方であっても)が他の人に向けてツイート(リツイート)してくれるという特徴があります。
そのため、自分の発信した内容が、知らないうちにいろいろなところに拡散される状況(バズ)が起こることがあります。
例えば、「共感を呼ぶツイート」であったり、「多くの方が、他に人にも伝えたくなるような内容や情報」だったりすると一気に拡散されたります。
ツイッター利用者は、文字で表現することが好きな人が多いです。
つまり、基本は「発信したい人が使うツール」です。
もちろん情報を取得するために使っている方もおられますが、その際に必要とされる情報は、即時的に必要な情報であることが多いです(例えば、天気・地震速報・電車の遅延・交通渋滞など)。
その観点で考えると、療育事業所を探すために、Twitterを使うことはほぼあり得ません。
また、私の個人的な印象として、Twitterでは何かの宣伝(療育事業所で言えば、OPENした・新しいサービスを始めたなど)については、かなり反応が悪いです。
同様に、スタッフ募集!といったツイートも、反応(いいねやリツイート)は見込めないというのが私の印象です。
本音が出やすいSNSの一つなので、Instagramのように裏側は見せない文化とは全く反対のポジションのSNSのだと言えます。
これらの観点から、Twitterと療育事業所の相性はあまり良くないと言わざるを得ません。
私も、以前自社アカウントを作成したことがありますが、時間を投下する有効性を見いだせなかったため、早々に削除した記憶があります。
Twitterは、むしろオーナー様の個人の発信力強化として活用し、オーナー様のファンを作り、「この人が運営している事業所ってどんなところだろう?」と興味を持ってもらい、事業所サイトに来てもらう、という個人戦で運営する方が効果は高いと思われます。
弊社では、上記の通り今後も発信することはないと思います。
日々の活動報告については、自社サイトブログ以外では、Facebookページの活用があげられます。
Facebookページはブログと違って比較的簡単に記事投稿することができるので、「普段の療育の様子を保護者に見ていただくツール」としての使い勝手は抜群です。
ただし、ストック型ではないため、記事として書いたものがどんどん流れていってしまい、後から見返してもらうという機会がほとんどありません。
ブログであれば、「アーカイブ記事一覧」や「カテゴリー」から、たとえ数年前の記事でもすぐにアクセスして(読んで)もらえますが、Facebookページでは直近の記事(いわゆる旬な記事)しかアクセスしてもらえないという課題があります。
そのため、リソース投入の割には、利用者確保の効果は低いといえるでしょう。
また、フェイスブック自体が若者離れが指摘されており、またビジネスユースでの傾向が高いことから、療育業界の対象者(主に30代〜40代女性)とは少し違う世代がターゲットになります。
LinkedInほどビジネス要素は強くありませんが、やはりTwitterと同様に「自分発信のメディア」であることには変わりありません。
そのため、「いいね」がたくさんあれば、利用につながるかというと決してそのようなことはありません。
弊社では、公費療育事業・自費療育サービスとも、利用率アップには繋がらなかったため、Facebookアカウントは削除して、現在は使っていません。
フォロワーがすでに数百人いましたが、時間をかける割に効果が低いため、終了しました。
ただし1点効果的な使い方があります。
それは、自社で行うセミナーや研修会を周知するための広告ツールとして使うことは有益性が高いということです。
弊社でも、セミナー等の案内をFacebookページの有料広告を使って行いましたが、一定の参加獲得につなげることができました(セミナー後のアンケートで、「Facebook広告を見て参加」と答えた方が一定数おられました)。
広告ツールとして割り切って使うのはアリかと思います。
弊社では、今後も発信する予定はありません。
YouTubeの最たる所以は、「他のSNSに比べて、伝える量が圧倒的に多いこと」です。
文字に比べ、動画は5000倍もの情報量があると言われています。
また「視覚情報」「聴覚情報」が同時に入るため、内容を確実に認識しやすくなります(読むだけ・聞くだけに比べて)。
さらに、テロップが入れば、「文字情報」も加わります。
つまり、情報量が多いだけでなく、人の五感に訴えることで、確実に伝えたいことが伝わるという意味においては、ここで挙げたツールの中で最大の効果をもたらせることにつながります。
そのため、長文のブログを毎日書くよりも、短い動画をコンスタントに上げる方が、「確実に伝わる」「伝える量が圧倒的に増える」というメリットがあります。
もちろん、動画を撮影する、編集する、YouTubeにアップ(公開)する、といった手間がかかるのは事実です。
ですが幸いなことに、発達支援や療育、教育における動画は、エンタメ系YouTuberが行っているような、編集力の高さが、視聴回数に影響する、ということはほとんどありません。
エンタメ系だと、フルテロップ(全部にテロップが流れている)が必須ですが、要所要所にテロップを入れておくだけで、十分です。
テロップを入れることは、編集において最もエネルギーを使う作業なので、これだけでも動画作成にかかるリソースは圧倒的に減ります。
もう一点動画が強力な集客ツールであることの理由に、「こちら(発信者)は視聴者を知らなくても、視聴者はこちらを知っている」ということが挙げられます。
これは、当たり前のことと言えばそうなのですが、意外にも大きなメリットがあるのです。
それは、「見学申し込みへの敷居が下がる」からです。
人は新しいことをしようとする際、かなりのエネルギーを要します。
元来脳は、変化を嫌うもの(新しいことは余計なエネルギーを使うので、脳はできるだけそれを避けようとします)なので、「新しい事業所に見学申し込みをする」ということも、今の生活が「変化すること」につながるため、「本当に見学依頼をしてもいいのかな?」と一旦躊躇します。
それが「敷居を感じる」という気持ちにつながり、「見学しなくてもいい理由」を無意識に探そうとします。
「ちょっと遠いかな」「実は厳しいところかもしれないな」「子どもが楽しめないかも」などです。
そんな葛藤がある中、「いつもYouTubeで見ている人がいる事業所」は、新たな関係性を構築する必要がない(と感じる)ため、「しんどくない」関係です。
そのため、「よく知っている人なので、どんな雰囲気かはある程度分かる」ことから、見学申し込みの敷居は大きくさがります。つまり「見学申し込み」につながりやすい、ということになります。
ただし、どのような動画が見学への敷居を下げることにつながるのか(つまり好印象を持ってもらえるのか)を検討するなど「企画戦略」は必要です。
また、YouTubeチャンネルを開設したり、サムネイルを作成したりするといった他のSNSに比べ、手間がかかることは事実です。
しかし一旦動画による集客が軌道に乗れば、「動画が利用者を連れてきてくれる」ことにつながるため、新しい動画を定期的に出していくだけで、「動画資産」が蓄積され、それらがまた利用者を連れてくる、といった半自動的な集客システムができあがります。
ここでは「動画によるYouTubeからの収益(広告収入)」による売上貢献は考えていません。広告収益を得るには、登録者数1,000人、総再生時間4,000時間というかなり高いハードルがありますし、またこれらの条件がクリアしても事業売上につながるような大きな額を得ることはできません。
弊社が最も力を入れているSNSが動画(YouTube)です。
「こども発達LABO.」(メインチャンネル)「療育支援者の学校」(サブチャンネル)というチャンネルと、「発達支援ゆず(YuzuTube)」という事業所単体のチャンネル(利用者確保と既存利用者への情報提供として活用)の2種類のチャンネルを運営していますが、見学来所される方の100%近くが、「YouTubeを見ました!」と言われます。
弊所は、親子通所ということもあり、遠方(他都市) の方のご利用も多くありますが、遠方からこられる理由の中で最も多いのが「YouTubeを見て通ってみたいと思ったから」です。
まとめ
どのSNSに注力するべきかというのは、業界の特性にもよりますので、「これをやっておけば間違いない」というものはありません。
ですが、私が療育事業所の利用者確保にオススメするとしたら、断然YouTubeです。
動画だからこそ、人柄が伝わりますし、想いも伝わりやすいです。
コツコツ続ける努力は、他のどのSNSよりも必要になりますが、一旦軌道に乗ったときには、何よりも強力な破壊力(何を破壊する?(笑))があります。
さらに、既存の利用者との親近感を増やし、継続した利用につなげるためには、Instagramがおすすめです。
日々の療育内容を紹介するだけだと、お腹いっぱいになってしまうので、スタッフの人柄が分かるような投稿も効果的でしょう。
以上、私の経験に基づく、利用者確保に効果的なSNSについて、考察してみました。
皆様も、自社の得意を確認した上で、最適なSNSを選び、注力してみてください。
弊社では、利用者確保における効果的かつ効率的な手法についてご相談いただける療育事業所オーナー様向け相談事業(単発相談&継続コンサルティング)や、YouTubeを貴所のブランディングに使う「YouTubeコンサルティング」を行っております。ご関心がある方は、下記ページをご参照ください。