「伝わらない部下」には理由がある|子どもの支援から学んだ関わり方のヒント

指示したはずなのに伝わらない。

期待していたのに動いてくれない。

採用したのにすぐ辞めてしまう。

マネジメントをしていると、そんな「うまくいかない部下」との関わりに頭を抱える場面が必ず出てきます。

私自身、これまでに複数の発達支援事業所を立ち上げ、スタッフ採用・育成を繰り返してきましたが、何度も同じような壁にぶつかってきました。

「どうして伝わらないのか?」「なぜ改善されないのか?」

その答えになるヒントが、子どもの発達支援の現場にありました。

「子どもへの関わり方」が、大人にも応用できる?

療育の現場では、発達に特性のある子どもたちと日々接しています。

彼らに対して、私たちはこんな関わり方を大切にしています。

  • 小さなステップで達成感を積み重ねる
  • 曖昧な言葉は避け、具体的に伝える
  • 一人ひとりの理解の仕方に合わせて支援する
  • できたことを見逃さず、しっかり認める

この関わりを、大人にも応用してみたところ、伝わらなかったスタッフが、少しずつ動けるようになる、そんな変化が生まれました。 

例えば、以前の記事でもご紹介した、株式会社識学さんの「姿勢のルール」の考え方を参考に、ルール化(マニュアル化)の徹底と、遂行の徹底を習慣化したところ、報連相の質が劇的に向上した、という経験があります。

このような取り組みは「子ども扱いをする」というものではなく、人が育つための本質的なプロセスに寄り添うということなのだと実感しています。

発達理論が教えてくれる、部下育成に必要なキーワード

発達支援では、次のようなキーワードがよく使われます。

  • 自己効力感(「やればできる」という感覚)
  • スモールステップ(小さな達成の積み重ね)
  • 見える化(情報や手順を視覚的に整理する)
  • 肯定的フィードバック(行動を具体的に承認する)

これはビジネス現場でもそのまま活かせるもので、例えば、

  • 曖昧な指示ではなく「行動レベル」で伝える
  • チェックリストやマニュアルでタスクを視覚化する
  • 成果だけでなく“プロセス”も丁寧に言葉にして認める

こうした工夫で、スタッフが動きやすくなり、主体的なチームづくりが行いやすくなります。

「発達特性」が背景にあるかもしれない行動とは

最近では、大人になっても発達特性(発達障害やそのグレーゾーン)を抱える方が職場にいることは珍しくありません。

たとえば、

  • 指示が抽象的だと理解できず、動けない
  • 複数タスクを同時に処理するのが苦手
  • 音や光に敏感で集中できない
  • 報連相が苦手で、仕事が止まってしまう
  • 空気が読めず、誤解を招く

こうした“困りごと”の背景には、脳の働き方や情報処理の違いがある可能性があります。

「やる気がない」「注意力がない」と決めてしまう前に、「理解の仕方(現状の捉え方)」そのものが違うのかもしれないという視点を持つことが、伝わらない部下への指導やマネジメントの第一歩になります。

部下育成に悩んだとき、関わり方を見直すヒントに

育成やマネジメントに行き詰まったとき、つい「どうしてこの人はできないのか」「もっと主体的に動いてほしい」と、相手の問題に意識が向いてしまいがちです。

ですが、そこで一度立ち止まり、「自分の伝え方や関わり方を変えることで、何かが変わるかもしれない」という視点を持つことが、とても大きなヒントになります。


子どもたちの発達支援の現場では、「わかりやすく伝える工夫」「小さな成功を積み重ねる支援」「安心して失敗できる関係づくり」が基本です。

そして、それらは大人の職場でもまったく同じように機能するということを、私は経営者として、何度も実感してきました。


「できない部下」ではなく、「理解の仕方が違う部下」。

そう考えることで、マネジメントの視点が柔らかくなり、関係性も変わり始めるのではないかと思います。

「伝わらない」を変えるために_今後の発信内容について

今後は、大人の発達特性にまつわるテーマをについても、より具体的かつ実践的に深掘りしていきます。

  • 大人の発達特性に関する基礎知識
  • 職場でよくある“困りごと”と対応例
  • 育成に役立つ具体的な工夫
  • 経営と支援をつなぐマネジメント視点

などを、実際のエピソードや現場の温度感を交えながら紹介していきます。

「伝わらない部下」に悩んでいる方にとって、少しでもヒントや視野の広がりになるような記事を発信していけたらと思っています。