【上司のための発達特性講座①】ADHDの特性がある部下との関わり方|知っておくだけで現場が変わる基礎知識と対処法


「あの部下、なんでこんなにできないんだろう」と思ったことはありませんか?

締め切りをよく忘れる。同じミスを何度も繰り返す。話を聞いているようで、全然違うことをしている。整理整頓が壊滅的で、デスクがいつもぐちゃぐちゃ。

「やる気がないのか」

そう感じたことがある上司は多いと思います。


でも実は、そういった部下の中にADHDの特性を持つ人が混じっている可能性があります。

そしてそれを知らないまま関わり続けると、指導はどこまでいっても噛み合いません。


この記事では、ADHDという特性を詳しく知らない上司・管理職の方に向けて、現場でそのまま使えるADHDの特性についての知識とADHDの特性を持つ部下の方への対処法について、ご紹介します。

そもそもADHDって何?


ADHDは「注意欠如・多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)」の略で、生まれつきの脳の特性です。

大事なのは、「本人の努力不足や性格の問題ではない」という点です。


やる気がない、だらしない、社会人としてダメだ、とった話ではありません。

脳の情報処理の仕組みが、多くの人とは少し違うという特徴があります。

主な特性は大きく3つに分けられます。

  • 不注意:集中が続かない、忘れっぽい、ミスが多い
  • 多動性:じっとしていられない、衝動的に動く
  • 衝動性:考える前に行動する、感情のコントロールが難しい

職場でよく見られるのは、この中でも「不注意」の特性です。

多動や衝動性は子どもの頃に目立ちやすく、大人になると表に出にくくなることが多いです。


職場でよくある「あるある」場面と、その特性の関係

「また忘れた」:記憶の問題ではなく、優先順位づけの問題

ADHDの人は、「重要なこと」を頭でわかっていても、それを「今やるべきこと」として意識しておく機能が弱い傾向があります。

メモを取っていても、そのメモを見るタイミングを忘れる、ということも起きたりします。

「忘れっぽい」というよりも、記憶を維持する仕組みそのものが弱い傾向があります。

「同じミスを繰り返す」:反省しているのに変わらない理由

本人は反省しています。

でも、次の場面で同じ状況になったとき、前回の反省が行動に結びつかないことがあります。

これは「気合いが足りない」とか「やる気がない」というものではなく、経験から学んだことを自己修正につなげることが苦手(脳の中で整理して積み重ねて行きづらい)という特徴から来ていることが多くあります。

「話を聞いていない」:聞いているが、処理しきれていない

口頭で複数の指示を一度に出すと、途中から情報が抜け落ちます。

これはワーキングメモリという脳の中の作業記憶の容量が一般的な人より小さいためで、聞く気がないわけではありません。

やってはいけないNG対応

ADHDの特性を知らずにやってしまいがちな対応が、実は逆効果になることがあります。

特に下記のような対応をしてしまうと、余計に萎縮したり、自信を無くしたりしてしまうため、注意が必要です。

  • 「何度言えばわかるんだ?」と責める→ 自己否定感が強まり、萎縮して動けなくなる
  • 「ちゃんとメモして」だけ言う→ メモを取っても活用できない特性がある場合、根本解決にならない
  • 長い口頭説明を一度にする→ 処理しきれず、結果的に何も伝わらない
  • 「前も同じこと言ったよね」と強調する→ 本人もわかっている。それでもできないのが特性なので、さらに追い詰めるだけになる

今日から使える、具体的な関わり方

ではADHDの特徴がある部下の方に、どのような関わり方をしていくのが良いのでしょうか。

いくつかの例をご紹介しますので、部下の方をイメージしながら読んでみてください。

① 指示は「一つずつ」「短く」「書いて渡す」

口頭での長い説明は、ADHDの特性を持つ人には特に伝わりにくいです。

一度に伝えるのは1〜2つまでに絞り、「まずこれだけやってください」と限定して指示しましょう。


またチャットやメモで文字として残すようにしてみてください。これだけで、行動につながりやすくなる場合が多いです。

② リマインドの仕組みを一緒につくる

「忘れないように」と指示するのではなく、忘れても思い出せる仕組みを一緒に考えることが大切です。

例えばスマホのアラームを一緒に設定する、締め切りの前日にリマインドを送る、タスクリストを共有フォルダで管理するなどです。


「忘れるのは本人の責任」という視点よりも、仕組みで補う発想に切り替えてみると、上司の方も負担も下がります。

③ チェックリストを使う

「ミスなくやって」という言葉かけよりも「このリストを全部チェックしたらOK」という形にします。

判断を本人の感覚に任せるのではなく、リストで「見える化」することで、ミスが大幅に減ります。


市販の「TO DOリスト」を使ってみるのも手です。

④ 「できていること」を具体的に言葉にする

ADHDの特性を持つ人は、特性による失敗経験も多いです。

そのため叱られ続けてきた経験を持つことが多く、自己肯定感が低いケースが少なくありません。


「よかった」「助かった」という言葉を、具体的な行動に紐づけて伝えることで、信頼関係の土台を作るきっかけになることもあります。


「先程の報連相はとても良かったですよ」といった上司からの言葉は、ADHDの部下の方のモチベーションに大きくつながることがあります。

⑤ 環境を整える

騒がしい場所、視覚的な刺激が多い場所などは、特性のある人には集中しづらい環境であることが多いです。

できる範囲で、集中できる環境(静かな場所・シンプルな環境の部屋など)を整えてあげることで、仕事への集中力が高まることがあります。

「特別扱い」ではなく「合理的な配慮」は、一般の社員にも効果がある

ここまで読んで、「そんなに手をかけないといけないのか」と感じた方もいるかもしれません。


でもここで少し「配慮」という言葉の定義を考えてみましょう。


メガネが必要な人がメガネをかけるのは「特別扱い」とは言われません。

その人に合ったものを選択したり、合った手段を選んだりすると思いますが、配慮もそれと同じだと言えます。

もちろんADHDの方に対しても同じです。


そして実は、こういったADHDの特性を持つ人への関わり方は、すべての部下に対しても仕事において有効でもあります。

例えば、「短く・具体的・書いて渡す」は、誰に対してもわかりやすい指示です。

その意味では、ADHDタイプの部下ために行った工夫が、チーム全体の生産性を上げることにもつながることも多くあります

最後に

ADHDの特性を知ることは、部下をラベリングするためではありません。

「なぜ伝わらないのか」「なぜ動けないのか」を正しく理解し、効果的な言葉かけや環境を構築することにつながります。

単に叱ることや何度も注意するといった対応ではなく、ADHDの特性に合わせた指導を行うことで、ADHDの特性がある部下の方だけでなく、チーム全体の空気を好転させていくことにつながります。


ADHDの特性がある部下の方に悩まれているなら、一度上記のような工夫をしてみてはいかがでしょうか。