メモを取っているのに仕事が進まない理由|ADHD特性のある部下との関わり方

こんにちは。株式会社ILLUMINATE代表の西村猛です。

「資料作成、お願いします。」

部下はしっかりメモを取っています。

ところが数時間後、「まだできていません」「忘れていました」。

「ちゃんとメモを取っていたよね?」

このような場面は、ADHD特性のある部下への関わりで悩む管理職の方からも、よく聞かれる相談の一つです。

実は、「メモを取ること」と「仕事を進めること」は別の力です

実は、「メモを取ること」と「仕事を進めること」は別の力です

私たちは、仕事を依頼するときに、無意識のうちに次のような流れを想定しています。

「指示を聞く」→「メモを取る」→「仕事を実行する」

しかし、実際の仕事は、それほど単純ではありません。

例えば、資料作成を依頼した場合でも、

  • 指示を聞く
  • メモを取る
  • メモの内容を整理する
  • 優先順位を決める
  • 他の業務との兼ね合いを考える
  • 作業を始める
  • 途中でメモを見返す
  • 仕事を完了させる

というように、いくつもの工程があります。

つまり、「メモを取った」時点では、まだ仕事のスタートラインに立った段階に過ぎません。


特に、仕事の整理や優先順位づけ、複数の業務を並行して進めることに難しさがある場合、この間のどこかで止まってしまうことがあります。


ここで大切なのは、「メモを取っているのになぜできないのか」と考えるのではなく、「仕事のどの工程で止まっているのか」という視点を持つことです。

上司がこの視点を持つだけでも、部下への関わり方は大きく変わってきます。

「なぜできなかったの?」よりも、「どこで止まってしまった?」と聞いてみる

仕事が進んでいない場面に遭遇すると、つい、

「なぜできなかったの?」

「どうして忘れたの?」

「メモを取っていたよね?」

と聞いてしまうことがあります。

もちろん、原因を確認すること自体が悪いわけではありません。しかし、この聞き方だけでは、本人も答えに困ってしまうことが少なくありません。

なぜなら、本人も「やろうと思っていたのに、できなかった」という感覚を持っていることが多いからです。


そこでおすすめしたいのが、「なぜできなかったのか」ではなく、「どこで止まったのか」を一緒に確認することです。

例えば、

  • メモは取ったけれど、その後見返していなかった
  • 別の仕事が入り、優先順位が分からなくなった
  • 何から手をつければよいか迷っていた
  • 途中まで進めたものの、他の業務に意識が移ってしまった

など、仕事が止まっている場所が見えてきます。

ここが分かると、「もっと気をつけて」と伝える必要はなくなります。代わりに、「どうすれば次は止まりにくくなるか」を一緒に考えられるようになります。

管理職が明日からできる3つの工夫

① 「メモしておいて」で終わらせない

「メモしておいてください。」だけで終わらせるのではなく、「次に何をするのか」まで言葉にしてもらうことが大切です。

例えば、「今の依頼について、最初に何をしますか?」「今日中にやることを3つ挙げてもらえますか?」と確認してみます。

メモを取ることが目的ではなく、「次の行動を明確にすること」が目的です。

② メモを見返すタイミングを決める

「必要になったら見返してね」ではなく、見返す時間をあらかじめ決めておきます

例えば、午前中に1回・昼食後に1回・退勤前に1回、などです。


記憶力に頼るのではなく、仕事の流れの中に「見返す時間」を組み込むイメージです。

③ メモの書き方を統一する

メモは自由に書くほど、あとから見返しにくくなることがあります。

例えば、【やること】【いつまでに】【終わったらチェック】の3つだけに絞ってみます。


複雑なフォーマットは必要ありません。誰が見ても分かる形にしておくことで、仕事の抜け漏れを減らしやすくなります。

まとめ|「メモを取ったのにできない」のではなく、「仕事の途中で止まっている」のかもしれません

「メモを取っているのに、なぜできないのだろう。」

そう感じる場面があるのは、決して珍しいことではありません。


大切なのは、「なぜできなかったのか」を追及することではなく、「仕事のどの工程で止まっているのか」を一緒に確認することです。


上司の役割は、本人を変えることではありません。また、本人の記憶力や気合いに頼ることでもありません。

その人が力を発揮しやすい仕事の進め方や仕組みを整えることです。


もし、「メモを取っているのに、なぜできないのだろう」と感じたときは、「仕事のどこで止まっているのだろう」と視点を変えてみてください。

その小さな視点の変化が、部下のパフォーマンスだけでなく、職場全体の働きやすさにもつながっていくと思います。