
臨時報酬改定という異例の通達の意味は?
令和7年12月、厚生労働省より発表された令和8年度(2026年度)の臨時報酬改定案。
その中でも現場に衝撃が走ったのが、「新規事業所の基本報酬を引き下げる」方針でした。いわゆる「二重価格」の導入です。
これにより、令和8年度からは「新たに開設される事業所」は、同じ支援内容であっても報酬が低く設定されるという制度上の転換点を迎えます。既存事業所は従来の報酬体系を維持できますが、だからといって安泰だと考えるのは、危険です。
この改定の本質は、「質の低い新規参入に対する抑止」であり、さらに言えば、令和9年度の本格改定に向けた「予行演習」でもあります。
今、守られているのではなく、「質を整えるための猶予」が与えられているに過ぎない。
そう考えることが、これからの療育経営には不可欠です。
ポイント①「量」の時代の終わりのはじまり
厚労省が今回のような「新設事業所の報酬引き下げ」に踏み込んだ背景には、明確なメッセージがあります。
それは、「ニーズなき新規参入を止めたい」ということです。
これまでの制度は、場所さえ確保できれば「とりあえず枠は埋まる」モデルでした。実際、制度が拡大する中で、事業者数は右肩上がりに増えてきました。
しかし、それに伴って生じたのが、「支援の質に対する課題」です。
これからの時代に求められるのは、「なぜこの事業所を選ぶのか」という理由のある療育です。
制度上も、「選ばれる理由のない事業所」は、徐々に排除されていく方向にあるのです。
ポイント②利用日数の制限という現実
さらに、自治体レベルでも動きが見え始めています。
例えば奈良県大和郡山市では、月10日までなどの日数制限が導入されつつあります。
今後、この動きが広がれば、「回数で稼ぐ」モデルは制度的に成立しなくなる可能性があります。
では、どうするのか?
答えは明確です。
「週1回の通所であっても、他の事業所の週5回に勝る成果を出す支援」に切り替えることです。
「質と濃厚さ(密度)」での勝負。
これが、これからの療育に必要な視点です。
ポイント③「猶予期間」をどう活かすか?がキモ
令和9年度の本格改定までのこの1年弱は、制度に守られている期間ではなく、「質的転換を実行するための準備期間」だと捉えるべきです。
この期間に必要なのは、
- 「質を証明できる仕組み」の構築(例:可視化された評価指標、支援記録の質、成果事例など)
- スタッフ一人ひとりの専門性を高める仕組み
- 「この事業所で働きたい」と思われる魅力ある人材戦略の設計
など、制度変更をむしろ組織改革のチャンスと捉える姿勢です。
なお弊社では、制度の動向に関わらず、以前から「質の高い療育とは何か」を問い続け、その実践に取り組んできました。
その一環として、今年は、あえて拠点を再編し、「2拠点体制」へと移行しました。
これは単なる縮小ではなく、「より質の高い療育事業所への第一歩」です。
具体的には、以下のような意図をもって再編を行いました。
- 地域密着型支援への回帰
拠点ごとに地域の実情や特性に合わせた支援モデルを構築し、地域との関係性を深めています。 - 機能の明確化と専門性の融合
一方の拠点では、セラピスト(作業療法士・言語聴覚士など)による専門的な評価と個別支援を中心に据え、
もう一方では、保育士や児童指導員による「日常生活への汎化」プログラムを充実させています。
この2つの支援軸を有機的に連携させることで、 「できた」で終わらせず、「日常でできる」にまで落とし込む支援を目指しています。
変革の時代に、経営者が持つべき覚悟
制度の変更は、時に現場に大きな混乱を生みます。
しかし私は、この制度が求める「質」こそ、本来私たちが目指してきた支援の姿だと感じています。
「本来の療育のあるべき姿」に近づいていると捉えています。
療育という仕事の価値は、一人ひとりの子どもに「その子らしい未来や役割」を、そして保護者の方には「子育ての安心と面白さ」を届ける役割があります。
その実現のためには、スタッフの努力や専門性だけでなく、経営者の意思決定と構造づくりが不可欠です。
制度が変わろうとしている現在、求められているのは「誰にでもできる療育」ではなく、「あなたの事業所だからできる支援」です。
「数を追う経営」から、「価値を届ける経営」。これが、これからの療育事業所に求められる役割だと思います。
この変化に対応するためには、経営者が「現場に丸投げ」するのではなく、現場と対話しながら共に質をつくっていく覚悟が必要です。
なぜなら構造を変えるのは、現場ではなく経営者の役割だからです。
そしてその構造の中で、スタッフが自信と誇りをもって働ける環境を整えることが、結果的に選ばれる療育へとつながっていきます。
もうすでに、預かるだけの療育や学習だけなど何かに特化した療育(お稽古ごとのような療育)では、運営できなくない時代に突入したと言ってよいでしょう。
「うちには送迎があります」だけで集まる時代ではないのです。保護者の知識やニーズはどんどん高まっています。
事業所側も、それに答えられるように、また保護者が気づきもしなかった視点を提供できるように、日々バージョンアップしていく必要に迫られています。
もちろん、理念だけを掲げているだけでは不十分で、「効果がある療育」を提供できない療育であれば早晩撤退を余儀なくされることになると言えます。
本当に質の高い、保護者から「選ばれる」療育を提供すること。
令和9年の改定に向けて、私も含め経営者の方々は、覚悟と選択が迫られていると言えるのではないでしょうか。
真剣に療育に向き合う、そして結果を出せる事業所が生き残るというフェーズに入りました。
今こそスタッフ一丸となって、この荒波を上手く乗りこなしていきましょう。
株式会社ILLUMINATEでは、変化の波を乗り越える具体的なサポートを準備しています。新年以降、順次ご案内いたします。


