
裁量労働制ニュースは「他人事」ではない
最近、裁量労働制をめぐる議論が再び注目を集めています。
長時間労働や健康被害、働き方改革の流れの中で、「どこまでを自己裁量に任せるのか」「本当に労働者を守れるのか」といった論点が取り上げられています。
児童発達支援や放課後等デイサービスの現場では、裁量労働制そのものが直接関係するケースは多くありません。
しかし、「残業を前提にした働き方」「職員の健康リスク」という観点では、決して他人事ではないはずです。
療育は、もともと人が中心の仕事です。
だからこそ、「善意」や「責任感」に支えられて回っている事業所も少なくありません。
ですが、その善意に甘えた運営は、やがてスタッフの疲弊や離職、そして経営リスクにつながります。
本記事では、療育ならではの「属人性」を活かしながら、残業に頼らない運営へと変えていく「仕組み化」の視点について、一緒に考えていきたいと思います。
療育の仕事は、もともと「属人性が高い」仕事である
療育は、子ども一人ひとりの特性理解から始まります。
同じ診断名でも、感じ方や反応の仕方はまったく違います。
ある職員の声かけには笑顔で応じる子どもが、別の職員だと緊張してしまう。そんな場面も珍しくありません。
また、保護者との信頼関係づくりも、非常に重要で大切な仕事です。
「あの先生だからこそ本音を話せる」という関係性が、療育の効果を高めてくれることもあります。
つまり療育は、もともと人に依存する部分が大きい仕事です。
マニュアルだけでは対応しきれない子どもや保護者の微妙な変化や、その場の空気を読む力が求められます。
だからこそ、すべてをマニュアルで縛るべきではないと言えます。
大切なのは、「属人性の部分」と「仕組み化すべき部分」を分けることです。
このメリハリがないと、現場は疲弊してしまいます。
それでも多くの事業所で、残業が常態化してしまう理由
療育現場では、子どもと直接向き合う時間以外の業務が意外と多くあります。
送迎、支援記録の作成、保護者対応、ケース会議、加算関連の書類作成、行政提出書類などなど。
これらが積み重なり、「気づけば定時を過ぎている」という状況もよくあるかもしれません。
さらに属人的なやり方に任せてしまうと、人によって記録の書き方やスピードがバラバラ、忙しい人に業務が集中する、できる人ほど遅くまで残る、といった状態が起こります。
結果として、スタッフは疲弊し、離職リスクが高まり、採用コストが増えます。
同時に残業代コストも増え、経営的なダメージも無視できません。
「質の高い療育を提供しているのに、現場がしんどい」。そんなことも起こり得ます。
「人に任せる領域」と「仕組み化する領域」の切り分け方
ここで大切なのがメリハリです。
属人的な業務と、仕組み化を上手く使い分ける必要があります。
子どもへの関わり方や声かけ、遊びやプログラムの工夫、保護者面談や関係づくり、チーム内でのアイデア出し。
これらは人が中心にいないと回らない業務です。同時に人によって得手不得手が違うため、チーム力が重要になります。
例えば、同じプログラムでも、ある職員は身体を使ったダイナミックな展開が得意で、別の職員は言語化や振り返りが得意、ということがあります。
つまり、それぞれの職員の個性が活きる部分です。
保護者面談においても、「寄り添い型」の人や「論理整理型」の人など、スタイルはさまざまです。
記録や書類のフォーマット統一、二重入力の予防、タイムテーブルの作成、連絡方法の統一、会議の進め方の明確化などは、仕組みで回せます。
反対に、ここを人のセンスに任せてしまうと、残業や抜け漏れの原因になります。
初回に作成するエネルギーは必要ですが、一旦雛形などを作成してしまえば、以後そのフォーマットで業務を行うことができるので、都度エネルギーを割く必要がなくなります。
もしフォーマットを修正することがあっても、軽微な修正で済むことが多いです。
「ここは自由に」「ここは仕組みで回す」。
この線引きをしっかり行うことが、残業削減の第一歩になります。
ILLUMINATEで取り組んでいる「仕組み化」の具体策
弊社では、実際に次のような取り組みを行っています 。
業務連絡をチャットツールに一本化し、電話による連絡方法を廃止しました(事業所間も含め、電話は緊急時以外は使いません)。
電話は相手の時間を奪うことにつながりますが、チャットツールだと相手の都合の良い時に確認ができます。
もちろん、常にチャット画面を開いているので、「長時間気づかなかった」ということはありません。
さらに、原則、業務時間外は連絡しない、緊急時のみ事前に決めた方法で対応、というルールを設定しています。
その結果、「いつ連絡が来るかわからない」というストレスが減り、言った・言わないのトラブルも大幅に減少しました。
定型の書式(会議録・報連相の書式・その他事務書式)、保護者向けお知らせ文、社内通知(回覧)などをひな形化して保存
毎回ゼロから文章を考えなくてよい状態にすることで、「考えるべき中身」に集中できるようにしました。
例えば、報告書は報告内容によって、それぞれの雛形を用意しておき、必要なものを適宜選択して使用するなどです。
このようなこ「フォーマット+個別性」で運用することで、「一から書類を作る」ということがなくなり、事務作業にかける時短につながっています。
業務マニュアルやチェックリストなどは、紙ファイルではなくオンラインで管理しています(もちろんイントラネットとして、外部アクセスができない形での管理です)。
分厚いマニュアルを印刷して保管することがないので、事務スペースを確保するもとにも役立っています。
また「困ったらここを見る」という安心感があるため、新人教育もスムーズになりました(「分からないことがあれば、イントラをみてね」と声をかけておくことで、安心してもらえます)。
このようにすることで、属人的な口頭指示に頼らない体制が整います。
会議は目的と時間を事前に決めます。
たとえば「30分で終える」「決定事項と担当者を必ず決める」など、具体的な目標を設定します。
そうすることで、例えば以下のような時間短縮が図れます。
・会議30分短縮×週1回で月2時間の時短。
・雑談15分削減×平日20日で月5時間。
これらを意識するだけで、月に一人当たり合計7時間が圧縮されることになります。
月7時間の削減は、残業1日分以上に相当します。
仕組み化で生まれた時間を「子どもと保護者のため」に使う
減らすのは、無駄な事務や調整の時間です。
そこで生まれた時間的余裕は、子どもへの丁寧な関わりや保護者支援、 チームでのケース検討などに使うことができます。
その結果、支援の質が上がり、スタッフ満足度が上がり、利用者満足度も上がるという三方良しの循環が生まれます。
経営的メリット
経営においてもメリットがあります。
残業が減れば、当然残業代コストは下がります。
さらに、職員の健康リスク低減、メンタル不調の予防、職率の低下、採用コストの削減といった効果も見込めます。
また、国が進めている働き方規制にも前向きに対応できる体制になります。
これらの取り組みを行うことで、「質の高い療育をしているのに、職員が疲弊する事業所」から、「質の高い療育を提供しながらも、長く続けられる事業所」に変わっていくことができます。
そして、このような働き方は、今後の療育業界においてスタンダードな考え方なっていくと思われます。
経営者とスタッフ(職員)は、敵同士ではありません。厳しい療育業界の中を生き抜いていく「仲間」です。
こういった仕組み化を図っていくことは、事業所が長く続き、地域社会の中で必要とされる事業所であり続けるための必須事項でもあると言えます。
おわりに
全部を機械化や仕組み化する必要はありません。
人がやる価値の高い部分は、しっかり残す。
一方で、仕組み化できる部分を放置すると、現場はいつまでも「根性」と善「意」で回り続けます。
そうならないためにも、属人的な部分と仕組み化で回す部分の区別が急務だと思われます。
弊社では、療育事業所様向けコンサルティングの一つとして、オーナー様向けオンライン相談(単発相談)を提供しています。
チャット導入、ひな形整備、オンラインマニュアルの作成、 会議・業務フロー改善などにも対応しています。
「残業を減らしたいけれど、どこから手をつければよいかわからない」
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