
近年、療育業界にも経営的な視点が求められるようになり、コンサルティング会社の参入が相次いでいます。
特に、船井総研さんをはじめとした大手コンサル会社は、そのネームバリューと情報力を武器に、療育事業者向けの支援を広げています。
しかし、現場で実際に子どもと向き合っている支援者の立場から見ると、彼らのアプローチには、どうしても看過できない「構造的な限界」があります。
本記事では、その限界と、現場から見たリアルな課題を共有したいと思います。
数字だけで現場は動かない
多くのコンサルティングが提示する戦略は、アンケートデータ・KPI・収益性分析といった、数字を中心に構成されたものです。もちろん、こうしたデータは事業を運営する上での判断材料として非常に重要です。経営改善を目指す上で、数字を無視して感覚だけで動くのはリスクも高くなります。
ですが、療育の現場は「数値化できないこと」が圧倒的に多いことを忘れてはいけません。
たとえば、「子どもの興味関心の変化」「保護者の安心感や想い」「支援者との信頼関係の構築」など、数値では捉えきれない変化が、実は療育の質を大きく左右しています。
数字には現れないけれど、支援者が日々の中で肌で感じる「変化していくこと」こそ、療育の根幹となることなのです。
実際に私も、某大手のコンサル会社から取材を受けたことがあります。
また事業所オーナー様の集まりで弊所のビジネスモデルについて講義形式でご紹介し、その後の懇談会にも参加しました。
その中で、終始違和感を感じることがありました。それは、机上でしか語られないという部分です。
彼らのやり方は、いくつかの事業所の成功事例を取材・編集し、「これが上手くいったモデルです」「これを真似すればうまくいきます」といったパッケージ化されたノウハウとして提示するものでした。
しかし、それはあくまでも「他事業所」で起きたことであり、自分の現場にそのまま当てはめてもうまくいく保証はありません。
子ども一人ひとりの違いや、スタッフの力量、地域性、保護者の関わり方などを加味しなければ、「本物の支援」は行えないのです。
専門性のない「運動療育」の危うさ
最近、特に危機感を覚えるのが、「運動療育」をメインコンセプトにした新規事業やフランチャイズの増加です。
運動そのものが悪いわけではありません。むしろ、子どもの発達にとって運動はとても大切な要素です。
しかし問題は、そのプログラムや支援内容を設計している人たちの専門性の低さです。
理学療法士として、数々の子どもたちと向き合ってきた経験から言えば、最近提供されている一部の運動プログラムは、
「それ、本当に発達段階を理解して構成されたの?」
「ただ体を動かしているだけになっていない?」
と思わざるを得ないものが少なくありません。
- 感覚統合の問題がある子に、無造作に跳び箱をさせる
- 姿勢保持が難しい子に、バランスボールを長時間使わせる
- 成功体験を積むどころか、“できない”ことを明確にしてしまう流れ
これらは一見「楽しそう」「運動しているように見える」ものの、実は発達支援としての本質がズレている可能性があります。
そして、そのズレた支援が生まれる背景には、「運動の専門家ではないコンサルタントが作ったプログラム」があります。
その結果、それを取り入れた療育未経験の経営者が、内容の良し悪しを判断できず、「とりあえず導入してみた」という形で現場に持ち込まれているのです。
このままでは、支援現場の質は低下し、子どもたちが「本当に必要な支援」を受けられなくなってしまいます。
これが「儲かりゃいい」につながるのです。
「保護者ニーズ」の変化に対応できない仕組み
さらに大きな課題となっているのが、変化に弱い仕組みです。
コンサル会社が作った戦略やプログラムは、基本的に「固定された型」がベースになっていることが多く、柔軟性に欠けます。
つまり、保護者のニーズや地域の実情が変化した時に、現場が自分たちで判断・調整できるだけの「思考力」や「裁量」が育っていないのです。
その結果、
「どうすればいいのか分からない…」
「またコンサルに相談しないと…」
「次の提案をもらうには、追加料金が必要らしい…」
という依存的な経営が出来上がってしまいます。
これは、言い方を選ばずに言えば、知識や経験の不足に付け込まれたビジネスモデルとも言えます。
「分からないから頼る」「頼るとまた料金が発生する」「結局、自分たちで考えなくなる」
このループにハマってしまうと、自走力が養われません。
カモになるな、自分の力を磨け
私は現場の人間として、経営者の皆さんに強く伝えたいのです。
本当に必要なのは、「知識を持った外部の声」ではなく、「現場を理解する内側の目線」です。
高額なコンサルティングを受けるよりも、そのお金を以下のように使う方が、ずっと未来のためになるはずです。
- 支援者が継続的に学べるよう、研修や勉強会に投資する
- 優秀な人材を採用し、しっかり育成する
- 現場での実践や失敗から学び、改善を繰り返す文化を作る
私自身、学びを続けることの大切さを痛感しています。支援の正解は一つではありません。
だからこそ、常にアップデートし続ける姿勢を忘れず、自分の力で考え、判断できるチームを育てていくことが、結果的に強い事業所をつくることにつながります。
私たちのコンサルティングは「現場主義」
私たちが行っているコンサルティングや相談支援は、数字ではなく、現場に立つ支援者としての視点に基づいています。
もちろん経営や戦略の要素も扱いますが、それ以上に重視しているのは、
- 支援の流れが実際の現場マッチしているか
- 子どもたちの発達段階や特性に合った内容か
- スタッフがやりがいを持って働ける仕組みになっているか
といった、単にパッケージを売るモデルではなく、オーナー様やスタッフ様に伴走する「伴走型サポート」です。
これは、コンサルタント自身が療育事業所運営の中で、日々悩みながら試行錯誤を繰り返してきた「生きた体験から生まれるサポート」であえると自負しています。
また、価格設定についても、起業初期の方や小規模事業者の方でも無理なく相談できるよう、良心的な金額での提供を心がけています。
私たちの役割は、単にアドバイスをすることではありません。
「目の前の子どもに、何ができるのか」を共に考える伴走者でありたいと思っています。
おわりに
療育の世界は、目に見える成果ばかりを追いかけるものではありません。
子どもの心と身体、家族の思い、そして現場の支援者の在り方、すべてが重なり合って、ようやく成果につながるのです。
データやノウハウだけでは語れない部分が多くあるのが療育現場です。
だからこそ、数字の奥にある「変化の本質」を見つめる視点を、これからの経営を始められる方にはぜひ持ってほしいと思います。


